強風の中、田んぼ道に立っていて気づいたことがある。それは、風上に向かって耳を向けると、風の音がほとんど聞こえなくなるということである。風が吹いてくる方向を向いたり、逆に背を向けるのではない。風の流れに対して自分の体が丁度横を向くようにして立つと、ざーとか、ばーとかいう風の音は聞こえなくなる。田んぼに生えた草がなびく音だけが聞こえるようになったから、驚いた。
強風の時に聞こえたざーとか、ばーとかいう音の正体は、おそらく耳の周りを風がきる音だと思われる。そのため風上に体を向けたときに風の流れが耳にぶつかって、雑音が生まれたのだと考えられる。一方体を90度回転させて耳を風上に向けると、ざーとかいう音は消える。驚いた。この時、耳の向きを微調整してより音の聞こえないポジションを探るとよい。
風の音が聞こえなくなって、周りの草が風で揺れる音だけが聞こえたときは、自分自身が風の中に溶け込んだような感覚になった気がして心地よかった。強風というのは耳にとって雑音でうるさいものだと思っていたが、風に対する自分自身の立ち方を変えるだけで強風への印象が大きく変わる。騒々しいと思っていた田んぼが実は静寂であったことに驚くし、その静寂の中に自分自身がまるでないもののように存在している感じがして、不思議な心地にもなる。
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